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【文語のエロティシズム】〜蒲原有明『有明集』から「愛欲の詩 四篇」を。

  文語(明治期)の色気を求めて土井晩翠から探索を始めたが、「詩人」のバロディーが浮かんだだけで、格調高いがエロティシズムは残念ながら見出せず、続く詩人として「蒲原有明」を読んでみた。  複雑な語彙やリズムを駆使した象徴派詩人として、『独絃哀歌』『春鳥集』『有明集』などを発表。薄田泣菫と併称され、北原白秋、三木露風らに影響を与えた。   蒲原有明(Wikipedia)  死とエロスの香り漂う「われ迷ふ」を作曲してみたが歌で終わるのが物足りなく、朗読することに。  文語の色気をご堪能あれ。 **The Eroticism of Literary Japanese** — Four Poems of Desire from Kambara Ariake’s *Ariake-shū* In search of the sensuality of Meiji-period literary Japanese, the exploration began with Doi Bansui. But aside from the parody “The Poet,” what emerged was grandeur and dignity rather than eroticism. So the search moved on to Kambara Ariake, one of the major poets who emerged after Doi Bansui. A Symbolist poet known for his intricate vocabulary and rhythms, Ariake published such collections as *Dokugen Aika*, *Shunchōshū*, and *Ariake-shū*. Often mentioned alongside Susukida Kyūkin, he went on to influence poets including Kitahara Hakushū and Miki Rofū. from "Kambara Ariake (Wikipedia)"  蒲原有明(Wikipedia) A musical setting was first made f...

(詩)洗濯おばさん




洗濯おばさんにとって
猛暑ほど喜ばしいものはない
猫の額ほどの庭に
満艦飾よろしく干す洗濯物が
あっという間に乾くからだ

おばさんの仕事は
洗濯である
朝八時に家族の衣類はもちろん
タオルやシーツや布団を干す
狭い庭に効率よく干すには
隙間なく
しかし重なることなく
丁寧かつ迅速に竿へかける
そうして出来た三列の巨きな暖簾の上端を
洗濯バサミで留める
出張洗濯なんぞさせたら
儲かるのではないかと思うほどの
手際よさだ

そして
十時に再び庭へ現れ
今度は物干し台をずらす
暖簾に日光を浴びせるためだ
神経質な性格なのだろう
十時を一分と過ぎたことがない
(多分、タイマーでもかけているのだろう)
なにせ、それが仕事なのだ

さて
その二時間後の正午
昼食前か後か不明だが
午砲(サイレン)とともにまたも現れ
十時同様、台をずらす
鼻歌を歌うでも
楽しげに微笑んでいるわけでもない
これぞ仕事といった表情で
黙々とその作業をこなす

おばさんには
投票率が半数を割ろうが
日韓関係が悪化しようが
関係ない
熱波で犠牲者が続出しようが
洗濯が使命のおばさんである
額の汗を手で拭いつつ
その責務を遂行する
愚痴もない
悲哀もない
まさに生きるとはこういうことだ、と
身を以て示しているようで
崇高なほどだ
おばさんの小柄な身体は
暴力的な熱射を浴びても尚
機敏に動いている
働いている
夏風邪を引きそうなほど
エアコンの利いた議事堂で
金バッヂが
またも差別的言動を無反省にも繰り返すなか
おばさんは
脇と背に汗の地図を滲ませながら
家族のために働いている

おばさんよ
おばさんよ
テレビや勲章とは縁遠い
無冠の庶民よ
その額にきらめく
健気な汗の珠以外に
尊き宝があろうか
バッチたちが振りかざす
「制裁」や「圧力」などより
頼もしく平和な主張があろうか!

蝉時雨の喝采を浴びながら
おばさんは
胸に乾いた旗たちを抱いて
ベランダの奥へ
サンダルだけペタペタ鳴らしつつ
戻る……

【詩】→「ぼくちんエラい!」
   →「ランサムなわたし」
   →「テセウスなわたし」



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