「色々取り入れた作品なので、ご自由にお読み下さい」ーー。
繰り返し読んだ。棋譜を傍らに、符号を確認しつつ読んだりもした。ひょっとして、それらの位置を線で結べば文字になり、読み解けるのでは、などとーー。
が、松本清張(『点と線』)ではあるまいし、そんな安っぽいミステリーを大兄が物すはずない。しかし、分かりたい。ああ、もう恥も外聞も捨てて、尋ねるしかない!ーと意を決して助言を求めた際のご回答が冒頭であった。
以前、平川氏の作品を「面白いぞ!現代詩」というWeb(ツイッター)で拝読した。それはエロチシズムに満ちた、ちょっとキケンな印象の内容と記憶している。それはエログロ趣向の私にヒットした。平川氏とは、前年秋のポエトリースラム福岡で初めてお会いした。私のいささかヤバい朗読に、身の余る感想を頂いた。そうしたご縁もあり、今回のアンソロジーをツイッターで知り、購読に至ったわけである。
さあ、今度はどんなエロスが繰り出されるだろう、とワクワクしつつページを開いた瞬間、面食らった。
乳房を露わにしたツノ銀中飛車が、うちに泊まりに来て△5四歩が食べたり飲んだり、たいして生えてもいない通算15期名人獲得を剃ろうーー(本作冒頭、引用)
うぬぬ???ーー小学4年で将棋をやめてしまっていた私は、しかし、「乳房」だの「剃る」だのと言った、ちょっとヤラシイ単語に惹かれて、「ツノ銀」云々を調べてみる。と、その陣形は確かに両ツノが尖ったような形で、乳房露わな女に見えなくもない。。。
と、まあ、そんなアンバイで読み進めることになった。タイトルの「授乳」を頼りに、駒や実在の棋士や陣形(タイトルの「ごきげん中飛車」もその一つ)を人物と見做して再婚(らしき)ドラマを辿る。未熟児、保育園……。実に現代的な生活臭が盤上に匂い立ってくる。肌、豊胸……は、エロ黒い同志(失礼)のキーワードだ。萌える!!
ことわっておくが、これはあくまで私の読みかたである。「ご自由に」とのお許しあっての、楽しみ。そもそも、詩人に詩の解釈を尋ねること自体が野暮なこと。「国語」のテストじゃないのだ。
何だか、レビュー以前のようで、お恥ずかしいばかり。それゆえ、現在(いま)も折に触れ読み返している。謎が謎を呼ぶーーというか、噛めば噛むほど新たな別の味が発見出来る快感? 丁度、ピカソやダリの抽象画を前にしたような、無視しようにも無視出来ぬザワメキ。アンソロジーの他作品が明確な場面設定と感傷味で書かれている印象のなか、この詩は確かに一見難解ながらも、その奇抜さが却って悪魔的魅惑を殊の外放っている。現代詩マニアは、このモニター(Kindle)の上に鼻血の花弁を「逸脱」することだろう!
逸脱も楽しかりけりゲンダイシ
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