「poetaqの横に”KUROSAWA ARIGATO”って書いてんだ」
「NJのポールっていう短大でクリエイティブライティングも教えてる詩人が『お前の朗読で、いくつもの人生を経験したよ」
「トロントの女流作家から”Love”って言われてさ」。。。
飛び入りを認められ、ビデオを褒められて調子に乗ったクソ詩人は、時間が押しているのも構わず、たらたらと自慢話をし続けた。
その前夜、私はマスターのお誘いを受け、「百鬼夜狂の怪」という、江戸時代の狂歌作家たちのアンソロジーを怪談専門家たちの末席に加わらせて頂く恰好で参加、朗唱した。メンバーは皆、怪談語りの名手とあって、それぞれ独特の口調が堂に入った「恐るべき」方々ばかりであった。我流の謡が耳に留まりスカウトされた小生はマンネリを避けるため、一首一首、その歌の内容に合わせて声色を変えて読んだ。稽古で試行錯誤が続き大変だったが、楽しく披露出来た。眼病のため暗めに灯していた電灯がうまい具合に演出効果を醸していた。
さて、昨夜のOPは、この「怪（会）」の開催前からマスターに参加表明していた。しかも、「来店」で。盆は元日とともに、私にとって年で唯一のフリー日である。遠出して、日頃撮れない映像なども撮っておきたい。独り身で気軽なジリ貧詩人は、途上の経路をあれこれ孤独に思案しつつほくそ笑んでいた。
しかし、超朝方（夕方６、７時に就寝、夜中２、３時起床）の私は、丑三つ時のパフォーマンスに些か疲労していたにもかかわらず、毎日の習慣から、起床時間に就寝することが出来ず、心身ともに朦朧としていて、これでは距離のある店を猛暑のなか訪ね、かつ、そこで再びパフォーマンスすることなど出来そうにない！ 申し訳なかったが、辞退のメールを送信した。寛大かつ温和なマスターは了承下さり、ワガママな私はそのままバタンQ 。寝正月ならぬ「寝盆」になってしまった。
とはいえ、心の中には急に断りを入れた罪意識と、「出たがり根性」が息づいていたらしい。OP開始の４時過ぎにむっくと起き上がると、タブレットを立ててYouTubeからライブ配信を開いた。そして、「飛び入り要請」をコメント欄に厚かましくも書き入れたのだった。
ここで、またまた優しいマスターはそれを承諾してくれ、「出たがり」は早速zoomを起動させて入室した。OPは既に休憩が終わり、終盤。あとはマスターだけ、というところで私が呼ばれた。
その奇跡（というより、ワガママ）が叶った喜びから、私は今週始め（火曜）のNuyoricanで披露し、これまでにないチャット感想を頂戴していた新作のPOEMOVIE「The Butterfly Dream」を動画とともに読んだ。何度も稽古していたし、好評を得ていたのもあって、私はドヤ顔で読んでいた。（イヤな性格である。。。）無事に終え、マスターから色々と尋ねられると、得意げに創作秘話や冒頭に述べた賛辞を並べる。終演時刻が迫っているにもかかわらず、飛び入り野郎は嬉々として自慢話を捲し立てるのだった。
一区切り着いたところで、最後のマスターにマイクが替わった。私はその瞬間、胸に後悔の泡が弾けるのを痛ましく惨めに感じた。私はプロフィールに受賞歴を並べるだけの輩や、これ見よがしのアーカイブを投稿する「自慢ちゃん」を嫌悪軽蔑している。しかし私は昨日、そうして嫌悪軽蔑する所業を自ら堂々と大々的にやってのけたのである。ああ。なんといけ好かぬ男なのだ。「嫌われる男性」のナンバー１は「自慢話得意話」。「承認欲求」というのは、裏返すと、「自分に自信がない」ということ。「自尊心の欠落」が「他者からの称賛」を過剰なまでに求めさせる。私はその典型であり、稀に頂いた「お褒め」が嬉しくて嬉しくてならず、それを吹聴したかったようなのだ。孤独な証拠。。。
明けて、マスターからメールをもらった。それは「興味深かったので、またの機会に」とのレスだった。私は心で泣いた。なんて、人格者なのだ。だから、神保堂は多くに愛されるのだ。私はつらつら述べた自省などすっかり忘失し、またも無反省に返事を送った。「こんなロクでな詩人だが、ヨロシク」などと。。。
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