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【知恵こそ武器】ロック歌舞伎「勧進帳」  Wisdom Is the True Weapon — Rock Kabuki “Kanjinchō”

  かつて、戦争資料館の館長から聞いたエピソード。招集された市民が軍服を手渡され、着てみると小さく、交換を申し出ると「お前が軍服に合わせろ!」と怒鳴られたそうだ。  役所、役人というのはそういうものだろう。「勧進帳」(能「安宅」)は、そんな「人を肩に嵌めようとする権力」の計略を知恵で乗り切ろうとする痛快劇である。しかし、その機転と裁量は、ただ一日ぼうっと過ごして育まれるものではなかろう。権力の前で怯え、平伏し、従ってしまうのが常。だからこそ、弁慶のような智勇を兼ね備えた人物に、時代を超えた憧れを抱くのかも知れない。現代で言えば、大谷翔平だろうか。。。   「弁天小僧 菊之助」  に続くロック歌舞伎の第二弾。「大恩教主の秋の月」の季節ではないが、選挙が近いともあって、制作した「勧進帳」のように、投票用紙に自分の意見を書けば無効になる。「指定の名を」というのが権力側の意向。そこに民意が反映されるのか、、、いつもの疑問である。  Once, I heard an episode from the director of a war museum. Citizens who had been drafted were handed military uniforms. When one man tried his on, it was too small. He asked for a different size—and was shouted at: “Adjust yourself to the uniform!”  That, in essence, is how bureaucracies and officials tend to work.  Kanjinchō (from the Noh play Ataka ) is a rousing tale about overcoming exactly this kind of power—power that tries to force people to fit its mold—through wit and ingenuity. But such presence of mind and judgment are not cultivated by drifting through one’...

ブルームズ・デー(6月16日) JAMES JOYCEに寄せて

『Finnegans Wake』by JAMES JOYCE



本稿執筆時
まだアメリカ西海岸辺りは「16日」のようなので
その日に因んだトピックを

ブルームズ・デー


20世紀の文豪の一人ジェイムス・ジョイス
私が敬愛するベケットの師匠である
『ゴドー』を始め
奇怪極まる傑作群を生んで
ノーベル文学賞まで受賞した鬼才の先生だけに
これまたイってる博覧強記
その代表作『ユリシーズ』の主人公・ブルームが
地元ダブリンを放浪する日「6月16日」に因んで
世界各地で祝祭が催されているらしい
私は丸谷才一の訳で読んだが
ジョイスに合わせて文体を章ごとに変えて訳出している
丸谷の腕に感服した覚えがある
「これが意識の流れか」と
分かったようで分からない内容だったが
三冊本を読了したというアリバイの満足だけは残った

さて
写真はその『ユリシーズ』ではなく
ジョイス晩年の傑作と言われる『フィネガンズ・ウェイク』の原書
初めて公に出た小生の短編を送った返礼に
大学院出の友人が送ってくれたものだった
「まともに対峙したら気がフれる」と恐れられている奇書だけに
長い間、ほおっておいたが
数年前、なにを勘違いしたのか
開いて音読までし始めた
永遠とも思われた蟄居が寂しかったのか
昔取った杵柄を思い出したかったのか
とにかく
訳分からぬまま
正誤も確かめることなく
とにかく声に出していた
なんとなく面白いと感じた箇所には朱線を引いた
その幾つかをーー

  Slog slagt and sluaghter! (p.500)

  Leg-before-Wicked lags-behind-Wall where here Mr Whicker whacked a great fall. (p.434)

 Someday duly, oneday truly, twosday newly, till whensday.(p.457)

 Before he fell hill he filled heaven:(p.57)----

挙げるとキリないが、とにかく「おやじギャク」と言ったら叱られるけれども、音で押し切るようなところが何とも爽快なのだ。ベケットが本書裏表紙の書評でこう述べている。

 Here words are not the polite contortions of twentieth-century printer's ink.They are alive.They elbow their way on to the page, and flow and blaze and fade and disappear.
(拙訳:本書の単語群は20世紀のプリント・インクの高尚な歪み(過ち)ではない。それらは生きている。それらはページを押し分けて進み、流れ、燃え立ち、色褪せ、消え去るーー)

『フィネガンズ・ウェイク』にストーリーは一応ある。主人公が一旦転落死するものの蘇生するまでの夢うつつの物語は、まさに「(無)意識の流れ」と言えるし、カウンセリングの「自動記述」を思わせる。だから、いちいちの単語の正確さを求めるのはさして重要でなくなる。むしろ、一連の流れ、なぜそういう発想になるのか、が奥底に迫る道。それを、外国語で試みようとするのだから、やっぱり立ち入るべきではなかったのか。。。

最後に、ちょっと気になる一節を書き留める。

 After having sat your poetries and you know what happens when chine throws over jupan.(p.435)

元号に初めて「日本古来の書から採用」との触れ込みだが、冷静に考えてみると、平仮名・片仮名のおおもとは「漢字」だろうーーなどと、大陸挟んだ反対の島国出身者がちょっと嫌味を呟いているのでは、と勘ぐってしまう。私はそれに対してこう反論する。「ジョイス先生。あなたの造語だって、ドイツ語のパクリじゃないですか。私の持ってるペンギン・ブック版の23ページ」

           Perkodhuskurunbarggruauyagokgorlayorgromgremmitghundhurthrumathunaradidillifaititillibumullunukkunun!

もはや「自国ファースト」で生きてゆけない世界です。。。

【引用文献】『Finnegans Wake』James Joyce , PENGUIN BOOKS (With an Introduction by John Bishop)










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