スキップしてメイン コンテンツに移動

注目

祝🐍巳年 切り絵動画 ヤマタノオロチ  Happy New Year of Snake Recitation Film"Kojiki (Ancient Japanese Legends),Yamatano-orochi-The Eight-Headed Serpent"" 

  昨年末、突然、腰痛に見舞われた。慣れぬ庭作業で歩行困難に。起床時などは着替えさえ出来なかった。それが始まったのが、ちょうどこの朗読動画に着手した頃である。 「蛇(オロチ)が降りてきた!」  これは退治せねば、と、三週間の格闘と度重なる「書き出し失敗」の末、完成したのが正月二日だった。お陰で、現在はなんとか歩けるまでに痛みは緩和している。悠久の魂魄が息づく神話と対峙するのは容易でない。恐るべし「言霊」である。 At the end of last year, I was suddenly struck by lower back pain. Unfamiliar garden work left me unable to walk. At times, like when getting up in the morning, I couldn’t even get dressed. This all began right around the time I started working on this reading video. “The serpent (Orochi) has descended!” I thought, I must vanquish it. After three weeks of struggle and countless "export failures," I finally completed it on January 2nd. Thanks to that, the pain has now eased to the point where I can walk somehow. Facing myths where eternal spirits reside is no easy task. The power of "kotodama" (the spirit of words) is truly fearsome. 太鼓朗読 古事記「八俣の大蛇」 Taiko Recitation: Kojiki "Yamata no Orochi–The 8-Headed Serpent" JPN Read/ENG Subs

詩「父の日」(8050問題)



老夫に希望などなかった
絶望もなかった
あるのはただ
「きょう」という一日だ
「きょう」を無事に
病に伏すことなくやり過ごすことが
目的なのだった

やり過ごすことは得意だった
なにせ
四十年余りも
雇われ人を務めてきた万年主任
せいぜい定年前の五年だけ
三人の部活の上に立った
その程度だから
役員会に出ることもなければ
社長とジカに顔を合わすこともない
自分より年下の大卒上司に逆らうことなく
黙々と働きさえすれば
通帳にさほど上がらぬ給料が振り込まれた
そうして二人も息子を育て
妻と老母を養い
分譲住宅のローンを払ってきた
偉大なる凡人なのだ


そうして花束とアジア旅行分の退職金で
祝された老後は
実に孤独であった
性格の真逆な妻は毎日
お茶だダンスだランチだ、と外出
遠く実家を離れて働く次男は
妻子と多忙だが楽しい都心暮らし
期待の長男と言えば
五十を過ぎて
アルバイトを転々としながら
実家の離れのプレハブで半ば引きこもり状態
思えば、十年近く
顔も合わせていない
「大学、大学」と言い過ぎたせいか
自分の学歴・職歴コンプレックスを
聞き分けのよかった長子に
晴らしてもらおうと
期待し過ぎたせいか
大学は出たものの
メンタル疾患で辞職し
帰郷すると
倉庫だったプレハブに蟄居してしまった。。。


悔やんでも仕方ない
そもそも
「ココロよりモノ」で働きに働いてきた
(といっても、下っ端にはタカが知れていたが)
団塊世代に
団欒など二の次だった
酒乱のオヤジに殴る・蹴るされ
女手一つで育てられた自分にとって
当時の大企業社員になれたことだけでも
幸せだったのだ
「大きいことはいいことだ」で
我が子には
「一流大学、一流会社」と言ってきたが
本など一冊と読まぬ窓際族である
子供が勉強好きになるわけがない
「トンビはタカを産まず」なのだ

男はテレビを見ながら
ふと
そんなことを思うことがある
とりわけ昨今は
「8050」問題にまつわる事件を
いやでも目にする
居間のサッシ越しに
プレハブがうかがえる
今年五十の長男が
今日もあの暑苦しい小屋で
息を潜めるように
ネットでも見ているのだろう
テレビ漬けの自分と同じだ
血は争えぬ

妻は今日もお出かけだ
帰りに手土産でも買って帰るのか
テレビで「今日は父の日」と
宣言していた
私は立派な父であったろうか
私の父は酒くらいで
女を作って妻子を捨てた
私はしかし
出世はしなかったが
二人の子を育て
家も建てた
その家はどうやら
自分の棺桶になりそうだ
余りにも広過ぎる
ひつぎ・・・

男はいつものため息をつくと
チャンネルを替える
大リーグで
日本人初のサイクル・ヒットが出たそうだ
その録画を見る
ああ
我が息子らより遥かに年下の若者が
世界で大活躍だ
夢など見ぬほうがよい
見るべくは
海の向こう
遠い世界
自分らとは
無関係の
テレビの中
(若者だって
スマホ漬けではないか!)

妻はいつ帰ってくる
晩メシには間に合うのか
またショートメールに
「遅れます。適当に食べてて」か
ああ
なんて幸せ
現地に行かずとも
時間がズレてても
メジャーの名場面が見れるとは
人生も
そうあればいい
多分
それも
棺桶まで
お預けか。。。




コメント