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【文語のエロティシズム】〜蒲原有明『有明集』から「愛欲の詩 四篇」を。

  文語(明治期)の色気を求めて土井晩翠から探索を始めたが、「詩人」のバロディーが浮かんだだけで、格調高いがエロティシズムは残念ながら見出せず、続く詩人として「蒲原有明」を読んでみた。  複雑な語彙やリズムを駆使した象徴派詩人として、『独絃哀歌』『春鳥集』『有明集』などを発表。薄田泣菫と併称され、北原白秋、三木露風らに影響を与えた。   蒲原有明(Wikipedia)  死とエロスの香り漂う「われ迷ふ」を作曲してみたが歌で終わるのが物足りなく、朗読することに。  文語の色気をご堪能あれ。 **The Eroticism of Literary Japanese** — Four Poems of Desire from Kambara Ariake’s *Ariake-shū* In search of the sensuality of Meiji-period literary Japanese, the exploration began with Doi Bansui. But aside from the parody “The Poet,” what emerged was grandeur and dignity rather than eroticism. So the search moved on to Kambara Ariake, one of the major poets who emerged after Doi Bansui. A Symbolist poet known for his intricate vocabulary and rhythms, Ariake published such collections as *Dokugen Aika*, *Shunchōshū*, and *Ariake-shū*. Often mentioned alongside Susukida Kyūkin, he went on to influence poets including Kitahara Hakushū and Miki Rofū. from "Kambara Ariake (Wikipedia)"  蒲原有明(Wikipedia) A musical setting was first made f...

思い出(人間ピラミッド)



まだ運動会が
秋にしか行われてなかった時代
本番を数日後に控えた
午後の校庭で
僕ら小五男子はピラミッドの稽古をしていた

秋晴れの陽光は眩しく
地面は剥き出しの膝や掌に熱いほど
長身だった僕は一番下の
右から二番目
短距離走は得意だったが
こうした集団演技は苦手だった
地面や人に触れるのも嫌である
だから
四つん這いで
必ずしも親しいわけではない級友らを支えるのは
拷問以外なにものでもなかった
幼な心にも
「これは学校のため」と
優等生よろしく自分に言い聞かせていた

そんな気持ちだから
厳しい号令にも
機械的に従うだけだった
誰一人
「頑張ろう!」なんて意欲を示す者はいなかった
張り切っているのは教師だけ
まるで軍隊のようだった

笛が鳴り
膝と手をつく
続いて上に級友が乗る
彼の膝頭が僕の肩甲骨をぐりぐりと揉む
痛くてならない
そこへ容赦無く
三段目が乗ってくる
膝に小石が食い込んで
悲鳴を上げそうだ
が
苦しいのは僕だけじゃない
皆、我慢している
そう指導されてきたのだから
僕一人、我が儘は許されないのだ


顎をしゃくった僕の目の前に
四つん這いの僕の影が揺れていた
利き腕の右は肘がしゃんと伸びているが
左肘はくの字に震えている
もうダメだ、と思った瞬間だ
地面にお腹が着くや否や
雪崩が僕の背中を襲った
息が出来ない
伸(の)されてゆく
遠くでピピーと笛が鳴る
溜息と罵声が浴びせられる
が
不思議と僕は悔しくなかった
いや
全くなかったわけではない
ただ
不謹慎だが
崩してしまったことに
言い知れぬ
痛快さを覚えていた
それを表立って表せないから
僕は渋面を作って
級友や先生にペコペコ謝った
「ちっ。しょうがねぇなぁ」と
教師がやり直しを命じる
誰も僕の真意に
気づきはしなかったーー

そういう意味において
ピラミッドは僕に
集団バイアスのいなし方を
教えてくれた

児童というのは
先生たちが期待するほど
児童でもないのである。。。


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