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【クリスマスは孔雀の聖歌で〜W.B.イェイツ「孔雀」】A poetry chant for Christmas Eve. “The Peacock” by W. B. Yeats

  本日はクリスマスイブ。七面鳥がふさわしいところだが、父親の県展入選の写真を使わせてもらうことにして、孔雀でお許しください。真っ白の羽の孔雀だが、動画制作中、彩色の誘惑に駆られ、ヴィジュアルに傾いてしまった。まあ、クリスマスでもあるし、美を意識してのこととご勘弁ください。 戦後80年も、残すところ一週間。戦闘機の代わりに「熊」が襲来する一年だった。来年こそ、まともな年になりますように。。。    動画の詩「孔雀」は、W .B.イエーツ、中期の詩集「レスポンシビリティーズ」所収。世俗的な富より美こそ、と謳う。グレゴリオ聖歌などとても歌えないが、たまには美しいものを、と原文の美麗さに乗って口ずさんだもの。お気に召していただければ幸い。  Today is Christmas Eve.  A turkey would be more appropriate, perhaps, but instead I have borrowed a photograph by my father—one that was once selected for a prefectural exhibition—and ask your forgiveness for presenting a peacock instead. This peacock, with its pure white feathers, was meant to remain unadorned. Yet during the process of making the video, I found myself tempted by color, and the work gradually leaned toward the visual. Since it is Christmas, I hope you will allow this indulgence as an offering to beauty.  Eighty years since the end of the war, with only one week left in the year. It has been a year in which “bears,” rather than fighter jets, came ru...

思い出(人間ピラミッド)



まだ運動会が
秋にしか行われてなかった時代
本番を数日後に控えた
午後の校庭で
僕ら小五男子はピラミッドの稽古をしていた

秋晴れの陽光は眩しく
地面は剥き出しの膝や掌に熱いほど
長身だった僕は一番下の
右から二番目
短距離走は得意だったが
こうした集団演技は苦手だった
地面や人に触れるのも嫌である
だから
四つん這いで
必ずしも親しいわけではない級友らを支えるのは
拷問以外なにものでもなかった
幼な心にも
「これは学校のため」と
優等生よろしく自分に言い聞かせていた

そんな気持ちだから
厳しい号令にも
機械的に従うだけだった
誰一人
「頑張ろう!」なんて意欲を示す者はいなかった
張り切っているのは教師だけ
まるで軍隊のようだった

笛が鳴り
膝と手をつく
続いて上に級友が乗る
彼の膝頭が僕の肩甲骨をぐりぐりと揉む
痛くてならない
そこへ容赦無く
三段目が乗ってくる
膝に小石が食い込んで
悲鳴を上げそうだ

苦しいのは僕だけじゃない
皆、我慢している
そう指導されてきたのだから
僕一人、我が儘は許されないのだ


顎をしゃくった僕の目の前に
四つん這いの僕の影が揺れていた
利き腕の右は肘がしゃんと伸びているが
左肘はくの字に震えている
もうダメだ、と思った瞬間だ
地面にお腹が着くや否や
雪崩が僕の背中を襲った
息が出来ない
伸(の)されてゆく
遠くでピピーと笛が鳴る
溜息と罵声が浴びせられる

不思議と僕は悔しくなかった
いや
全くなかったわけではない
ただ
不謹慎だが
崩してしまったことに
言い知れぬ
痛快さを覚えていた
それを表立って表せないから
僕は渋面を作って
級友や先生にペコペコ謝った
「ちっ。しょうがねぇなぁ」と
教師がやり直しを命じる
誰も僕の真意に
気づきはしなかったーー

そういう意味において
ピラミッドは僕に
集団バイアスのいなし方を
教えてくれた

児童というのは
先生たちが期待するほど
児童でもないのである。。。


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