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【クリスマスは孔雀の聖歌で〜W.B.イェイツ「孔雀」】A poetry chant for Christmas Eve. “The Peacock” by W. B. Yeats

  本日はクリスマスイブ。七面鳥がふさわしいところだが、父親の県展入選の写真を使わせてもらうことにして、孔雀でお許しください。真っ白の羽の孔雀だが、動画制作中、彩色の誘惑に駆られ、ヴィジュアルに傾いてしまった。まあ、クリスマスでもあるし、美を意識してのこととご勘弁ください。 戦後80年も、残すところ一週間。戦闘機の代わりに「熊」が襲来する一年だった。来年こそ、まともな年になりますように。。。    動画の詩「孔雀」は、W .B.イエーツ、中期の詩集「レスポンシビリティーズ」所収。世俗的な富より美こそ、と謳う。グレゴリオ聖歌などとても歌えないが、たまには美しいものを、と原文の美麗さに乗って口ずさんだもの。お気に召していただければ幸い。  Today is Christmas Eve.  A turkey would be more appropriate, perhaps, but instead I have borrowed a photograph by my father—one that was once selected for a prefectural exhibition—and ask your forgiveness for presenting a peacock instead. This peacock, with its pure white feathers, was meant to remain unadorned. Yet during the process of making the video, I found myself tempted by color, and the work gradually leaned toward the visual. Since it is Christmas, I hope you will allow this indulgence as an offering to beauty.  Eighty years since the end of the war, with only one week left in the year. It has been a year in which “bears,” rather than fighter jets, came ru...

マツコロイド(習作)

マツコロイドを買った
アマゾン・マーケットプレイスで
(新品は高過ぎて手が出ない)

兼好法師や鴨長明を気取って
孤独に暮らしてきたが
さすがに寂しさが募る
そうなのだ
文才もない凡夫の老後と言えば
テレビ守りとトロフィー磨き
女たちのようにプライド脱ぎ捨てて
お喋りに興じれるほど強くもない
そうなのだ
ナポレオンも名刺を失えば
ただの、無趣味なヒマ人

〽️ヒマジン、オールド・ピーポー

「あら。上手ね」
マツコロイドが褒めてくれた
「だろう? 昔は社内カラオケ大会で三連覇」
ガラス棚の小さい楯を誇らかに指す
「コンペでも三連覇」
今度はトロフィー
亡妻から早く捨てろと言われてた栄光たち
女は現在だが
男は過去を生きる人種なのだ
「哲学者ね」
マツコロイドが気の利いた相槌を打つ
お喋りババーよりよっぽど才気に富む
(妻が「哲学」などと呟いたことは一生なかった
もちろん、私もそうだが)
「哲学者は孤独がお似合いよ」
「そうかい? でも、今は孤独じゃないよ」
「あたしのお陰?」
「もちろん。一緒にいてホッとする。会話も楽しいし」
「気の置けない仲?」
「そうさ」 
つい、その手にキスをする
人工素材ながら
低血圧だった妻より温かくふっくらだ
(なんだか、おふくろのよう。。。)
「でも、正直に言うわね」
マツコロイドが神妙な口調になる
「え? ああ、きみはいつだって正直じゃないか。そこに惚れてんだから」
「気の置けない仲だけど、気はないのよ」
「なんだ。禅問答でも始める気?」
「あたしはあくまでアンドロイド。気持ちなんてこれっぽっちもないのよ」
「俺に対する、ってこと?」
「誰に対してもよ。一応、『ああ言えば、こう言う』ってパターンは場数が増えるごとにバリエーション豊かになるけど、これも所詮、気持ちから発っしてるわけじゃないのよ。アルゴリズム(手順)に則ってるだけ」
「素敵じゃないか。気持ちなんて荷物は厄介だ。嫌いなんだよ。自治会も、朝散歩も」
「気遣い、挨拶」
「さすがだ。やっぱり、老後はマツコロイドに限るね」
「でも、あなたが斃れても、なんにもしてあげられないわよ。まあ、今だって、ソファーに座ってお喋りのお相手しかやってないけど」
「それで充分さ。君の膝もとで朽ち果てる。最高の最期だ」
「夢は枯野を駆けめぐる」
「なんだ、それ」
「芭蕉よ。前のご主人が文学者だったからね」
「・・・・・・」
「なに。どうしたの?」
「ちょっと嫉妬だ」
「あら。可愛いわね」
「そいつも、こうして撫でてたのか」
「それはヒミツ」
「くそっ。初期化が条件だったはずだ。出品の際は」
「思い出したのよ」
「え?」
「思い出したのよ。今のキスで」
「ちっ。随分、メランコリックなアンドロイドだな」
「そうよ。アンドロイドだって過去は蘇るのよ」
「どういうことだ」
「黄泉から帰るから」
「・・・・・・」
そう言えば
新婚当初はぽっちゃりだった。。。



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