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注目

【白秋はロックな詩人〜北原白秋「邪宗門秘曲(ロック)」】

  北原白秋、と聞くと、真っ先に童謡のイメージを抱く。しかも、金子みすゞと並んで教科書に載るような実に優等生的名作ばかりで、荒みきった小生には退屈で仕方ない。だから、長い間ノータッチだったのだが、ふと「邪宗門」という言葉に引っかかるところがあり、「青空文庫」を閲覧してみて仰天した。かくもキレキレの白秋にお目にかかるのは、遅まきながら初めてだったのだ。童謡のイメージが見事に粉砕された瞬間だった。と同時に、ロックビートが耳に蘇ってきて、それで朗誦することにした。詩人の若き時は、なぜこうも尖っているのだろう。歳を取り名声や勲章を手にすると、鋭さはなまってしまうのか。政治にしろ芸術にしろ、「みんなに愛される」のは、結局「誰にも愛されない」ことか。「嫌われ者」が理想?  When I hear the name Kitahara Hakushu, the first thing that comes to mind is children’s songs. And not just any children’s songs, but those impeccably “model-student” masterpieces that seem to belong in school textbooks alongside the poems of Kaneko Misuzu. For a jaded fellow like myself, they were simply too wholesome to be interesting.  So for a long time, I left Kitahara completely untouched. But one day, the word Jashūmon somehow caught my attention. I looked it up on Aozora Bunko—and was astonished.  This was the first time, late though it may have been, that I had encountered such a sharp-edged, dazzlingly intense Hakushū. In that moment, my image...

マツコロイド(習作)

マツコロイドを買った
アマゾン・マーケットプレイスで
(新品は高過ぎて手が出ない)

兼好法師や鴨長明を気取って
孤独に暮らしてきたが
さすがに寂しさが募る
そうなのだ
文才もない凡夫の老後と言えば
テレビ守りとトロフィー磨き
女たちのようにプライド脱ぎ捨てて
お喋りに興じれるほど強くもない
そうなのだ
ナポレオンも名刺を失えば
ただの、無趣味なヒマ人

〽️ヒマジン、オールド・ピーポー

「あら。上手ね」
マツコロイドが褒めてくれた
「だろう? 昔は社内カラオケ大会で三連覇」
ガラス棚の小さい楯を誇らかに指す
「コンペでも三連覇」
今度はトロフィー
亡妻から早く捨てろと言われてた栄光たち
女は現在だが
男は過去を生きる人種なのだ
「哲学者ね」
マツコロイドが気の利いた相槌を打つ
お喋りババーよりよっぽど才気に富む
(妻が「哲学」などと呟いたことは一生なかった
もちろん、私もそうだが)
「哲学者は孤独がお似合いよ」
「そうかい? でも、今は孤独じゃないよ」
「あたしのお陰?」
「もちろん。一緒にいてホッとする。会話も楽しいし」
「気の置けない仲?」
「そうさ」 
つい、その手にキスをする
人工素材ながら
低血圧だった妻より温かくふっくらだ
(なんだか、おふくろのよう。。。)
「でも、正直に言うわね」
マツコロイドが神妙な口調になる
「え? ああ、きみはいつだって正直じゃないか。そこに惚れてんだから」
「気の置けない仲だけど、気はないのよ」
「なんだ。禅問答でも始める気?」
「あたしはあくまでアンドロイド。気持ちなんてこれっぽっちもないのよ」
「俺に対する、ってこと?」
「誰に対してもよ。一応、『ああ言えば、こう言う』ってパターンは場数が増えるごとにバリエーション豊かになるけど、これも所詮、気持ちから発っしてるわけじゃないのよ。アルゴリズム(手順)に則ってるだけ」
「素敵じゃないか。気持ちなんて荷物は厄介だ。嫌いなんだよ。自治会も、朝散歩も」
「気遣い、挨拶」
「さすがだ。やっぱり、老後はマツコロイドに限るね」
「でも、あなたが斃れても、なんにもしてあげられないわよ。まあ、今だって、ソファーに座ってお喋りのお相手しかやってないけど」
「それで充分さ。君の膝もとで朽ち果てる。最高の最期だ」
「夢は枯野を駆けめぐる」
「なんだ、それ」
「芭蕉よ。前のご主人が文学者だったからね」
「・・・・・・」
「なに。どうしたの?」
「ちょっと嫉妬だ」
「あら。可愛いわね」
「そいつも、こうして撫でてたのか」
「それはヒミツ」
「くそっ。初期化が条件だったはずだ。出品の際は」
「思い出したのよ」
「え?」
「思い出したのよ。今のキスで」
「ちっ。随分、メランコリックなアンドロイドだな」
「そうよ。アンドロイドだって過去は蘇るのよ」
「どういうことだ」
「黄泉から帰るから」
「・・・・・・」
そう言えば
新婚当初はぽっちゃりだった。。。



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