今月・4月17日に95歳を迎える現役の影絵作家・藤城清治氏。
その展覧会「愛 生きるメルヘン展」が昨日4月13日から5月26日まで、宮崎県立美術館で開催される。例のごとく「ラジオ深夜便」明日へのことばでのインタビューで知った。
インタビューで心に残っている言葉を要約で。
90才を超えて、なお、1日1万歩を欠かさない理由を問われ、
「生きる力をどこまで保てるか。体の内から出る作品、本物の作品を作りたい」とーー。
うちに見つけた絵本が「浦島太郎」。物理学者の中谷宇吉郎が我が子のために書いたという童話に影絵をつけた。表紙の竜宮の姫がなんとも妖美なのだ。
グリム、アンデルセン、最近では「爆笑問題」太田光氏の小説とコラボ絵本も出されている。インタビュアーは「見えない風まで見える」と表現していたが、まさに臨場感に富む、目眩く幻影世界。。。
そんな、一言で「メルヘン」と片付けられない作品群は、実は、冒頭のたゆまぬ脚力強化によって生まれているのである。
インタビューを聴いていて、村上春樹を思い出した。彼は毎朝数十キロ走っているとのこと。エッセー『走ることについて語るときに僕の語ること』(講談社)で、「真に不健全なものを扱うには、人はできるだけ健康でなくてはならない。それが僕のテーゼである。つまり不健全な魂もまた、健全な肉体を必要とするわけだ」「息長く職業的に小説を書き続けていこうと望むなら、我々はそのような危険な(ある場合には命取りにもなる)体内の毒素に対抗できる、自前の免疫システムを作り上げなくてはならない。そうすることによって、我々はより強い毒素を正しく効率よく処理できるようになる。言い換えれば、よりパワフルな物語を立ち上げられるようになる」ーー
齢95の影絵作家が望む「本物」とは、まさに、これではなかろうか。その証拠に、彼の描く人物たちの目は、見るものを射すくめる命が宿っている。指を片刃カミソリで傷つけながらも、巨匠は常に命を彫り続けているのだ。
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