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【知恵こそ武器】ロック歌舞伎「勧進帳」  Wisdom Is the True Weapon — Rock Kabuki “Kanjinchō”

  かつて、戦争資料館の館長から聞いたエピソード。招集された市民が軍服を手渡され、着てみると小さく、交換を申し出ると「お前が軍服に合わせろ!」と怒鳴られたそうだ。  役所、役人というのはそういうものだろう。「勧進帳」(能「安宅」)は、そんな「人を肩に嵌めようとする権力」の計略を知恵で乗り切ろうとする痛快劇である。しかし、その機転と裁量は、ただ一日ぼうっと過ごして育まれるものではなかろう。権力の前で怯え、平伏し、従ってしまうのが常。だからこそ、弁慶のような智勇を兼ね備えた人物に、時代を超えた憧れを抱くのかも知れない。現代で言えば、大谷翔平だろうか。。。   「弁天小僧 菊之助」  に続くロック歌舞伎の第二弾。「大恩教主の秋の月」の季節ではないが、選挙が近いともあって、制作した「勧進帳」のように、投票用紙に自分の意見を書けば無効になる。「指定の名を」というのが権力側の意向。そこに民意が反映されるのか、、、いつもの疑問である。  Once, I heard an episode from the director of a war museum. Citizens who had been drafted were handed military uniforms. When one man tried his on, it was too small. He asked for a different size—and was shouted at: “Adjust yourself to the uniform!”  That, in essence, is how bureaucracies and officials tend to work.  Kanjinchō (from the Noh play Ataka ) is a rousing tale about overcoming exactly this kind of power—power that tries to force people to fit its mold—through wit and ingenuity. But such presence of mind and judgment are not cultivated by drifting through one’...

紫陽花


湿らせてくれたのは姪っ子だった
ほうっておいて欲しかったが
役人よりマシ、と
お任せした
想い人が恋しかった

トンネルを抜けると
曇天だった
道端には蓮ではなく
紫陽花だ
ここも梅雨かと
密集した小花たちを覗き込む

塾講師
明太子売り
社協職員
鉄工員・・・

私の小人だった
私たちはそれぞれの制服を着て
せっせと働いていた
(働かされていた)
怒鳴られ
鞭打たれ
目に余る光景は
反吐を催す万華鏡だった

ふと
花の一つに病床の私を見つけた
痩せさらばえた私は
(自らそう望んでの身だった)
幾つものチューブに繋がれ
息も絶え絶えだった
だらしなく開いた口の端から
涎が垂れていたが
キスでもするように口を尖らせ
何かを訴えている様子
小花はさすがに小さくて
私一人だけだったが
明らかに
姪っ子への遺言らしかった
私は
トンネルの中で
その一句を失念していて
何を言わんとしているのか
恥ずかしさとともに
興味があった
せいぜい
想い人の名でも呼んでいるのに違いない
我ながら女々しい奴だと舌打ちしつつ
その小花に耳を寄せる
病人の弱々しい声がした

「ほ、ほ、ほん……」

思い出した
あの世での私は
物書きを志し
ブログだのツイートだの
愚にもつかぬ駄文を書き連ねていた
アルバイトの傍ら
原稿書きに孤軍奮闘するも
頼りの両親に相次ぎ先立たれると
誇りだけ高い無才の未来なんぞ
知れている
その後は記さずとも察しがつこう
不仲だった弟の娘が
飛行機で派遣されたのである

弟から兄の夢を聞かされていたかどうかは
さだかでない
が、いずれにしろ
急に、しかも「本」とだけ言われたところで
思いが伝わろうはずもなかった

私はトンネルに差しかかる前
宇宙ゴミとともに
言葉の破片がキラキラと闇に煌めくのを
夢のように眺めていたことを思い出した
その
削除したらしいツイート群に絡まって
私の
箸にも棒にもかからなかった文章が
蛇の抜け殻よろしく揺れ泳いでいるのにも
気づいた
そんなモヤシのごときエクリチュールが
ひとかどの読み物と認められようはずもない

私は必死にそれらを量産していたのだ
そして
それらを恥とも思わず
本にしてくれ、などと姪っ子に頼んでいた
それほど私は
「何者か」になりたかったのだ
名札が
履歴が
賞賛が
そして
とりわけ想い人の唇が
狂おしいほど欲しかったのだ

鼻腔が痺れてきた
目頭が熱い
雫が口を開けた病人に滴る

もういいだろう
いや
もういいことにする
だって
散歩にまで
名刺を持ち歩きたくない
もっとも
誇るべき肩書きはおろか
「居士」の名さえ
ロクに言えないのだから

これからは
短冊に恋歌でも詠みながら
過ごすことにする……










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